「テケテケ」という妖怪。自分の記憶では、平成時代に出ていた学校の怪談の本に収録されていたと思いましたが、大人になってから調べたら雪国発祥の話しだと見つけました。そうなんだぁ、と思っていたのですが、松山ひろし氏の書籍を読んで、「テケテケ」と「助けて(足をよこせ!)」の話しは本来は別の都市伝説で、現在は混合されて語られるようになった。と書いてあって合点が行きました。
どちらを紹介するか悩みましたが、
今回は、あえて、混合された話しを紹介します。
足をよこせ!
冬の夜、冷え切った空気が辺りを包む中、彼と彼女は深夜の飲み会帰りに家路を歩いていた。二人は笑いながら他愛もない会話を交わし、ゆっくりと進んでいた。
ふと、彼が足を止め、顔を少し曇らせながら話し始めた。
「そういえば、この先にある踏み切り、昔ひどい事故があったんだよ。」
彼の言葉に、彼女は振り返り、不安げな顔を向ける。
「事故?」
彼は頷きながら、静かに語り始めた。
その事故が起きたのは大雪の日だった。踏み切りを渡っている際、雪に埋もれていた線路に足を挟まれた女子中学生が、どうしても抜け出せず、近づいてくる電車を前に無力な姿を晒していたという。
「その子、結局逃げられなくて、電車に轢かれたんだ。でも、普通なら即死だろ?違ったんだよ。」
怖がる彼女の顔を面白そうに眺めながら、彼は言う。
「大雪で寒かったせいで、傷口が凍っちゃったんだ。そのせいで死ねなくて、意識を保ったまま上半身だけで何とか動こうとしたらしい。」
彼女は口元に手を当て、ぞっとした表情を浮かべた。
「その子が見たのは、自分の切断された下半身だったんだ。絶叫しながら、そのまま絶命したらしい。以来、夜な夜なあの踏み切りで幽霊が出るって噂があるんだよ。」
彼は笑いながら、「いや、幽霊なんているわけないけどな」と付け加えた。だが、彼女の表情は強張ったままだ。
その時、遠くで踏み切りの警報音が聞こえた。
「カンカンカン…」
彼女がぎくりと肩を震わせた。
「終電、もうとっくに終わってるはずだよね…?」
彼は眉をひそめた。不審に思いながら、立ち止まって耳を澄ます。
「…何か聞こえる。」
彼女が囁いた。
静かな夜に響く音。それは軽やかだが、どこか不気味な「タッタッタッ」という音だった。
「走ってる…?」彼が口にする。
二人の顔が強張る。音は次第に大きくなり、近づいてくる気配がする。暗闇の中から、影が現れた。
それは、下半身のない化物だった。
黒い長髪が乱れ、顔が異様に歪んでいる。両腕だけで地面を這いながら、あり得ない速さでこちらに迫ってくる。
「足を!!足を!!!ああああしぃぃぃぃをよこせせせぇぇぇ!!!」
暗闇に二人の悲鳴が吸い込まれていった。
翌朝、踏み切り付近で若い男女の遺体が発見された。二人とも下半身を失い、恐怖に歪んだ顔で絶命していたという。
奇妙なことに、二人の体は完全に凍りついていた。そして切断された下半身はどこにも見当たらなかった。
寒空の下、踏み切りの警報音だけが虚しく響いていた。
まとめ
この話しだと、後半は「テケテケ」要素が強いですね。
現在はこの話しの方が多く知られていると思いますが、松山氏の書籍では、事故後駆けつけた運転士に上半身だけの女子高生が覆いかぶさり、助けて、と懇願する。運転士は恐怖で女子高生をおぶったまま気絶、その後発狂してしまう。という話しとのこと。女子高生が妖怪化することはない。
松山氏の書籍でも「テケテケ」を取り上げていますが、「テケテケ」は学校にでる妖怪の一種で紹介されていました。自分の鈍色の記憶もそれで結びついてスッキリしました。
両者に結びつくのは、両方とも下半身がない妖怪または人間。と言う事。そういう事もあり、混合されたのだと思いますが、都市伝説自体、一種の伝言ゲームであり、その中でディティールが変化し続けるものなので、混合されたものも新しい都市伝説として捕らえていいのではないかなと思います。