四話目。
会津（福島）の若松が舞台の怪談。とある夫婦に起こった悲劇
現代語訳：三 河内の國闇峠道珍、天狗に鼻彈かるる事
会津の若松という場所に、松浦伊予という人物がいました。
この人の家では、さまざまな不思議な現象が多く起こりました。
まずある夜、突然地震が起こったかのように家全体が激しく揺さぶられることがありました。
次の夜には、何者かが屋敷内に入ってきて、裏口の戸を叩きながら、「ああ、悲しいことだ」と大声で叫びました。
家の主の女房がそれを聞き、「何者だ、夜中に来てこのようなことを言うとは」と叱りました。
すると、化け物は少し退きましたが、近くの入口がちょうど開いているのを見つけ、駆け込もうとしました。
その姿を見ると、肌が白い女性で、白い帷子を着ており、長い髪を乱していて、言葉にできないほど不気味な様子でした。女房はただ事ではないと感じ、天照大神の御祓いを投げつけると、化け物はそのまま消えてしまいました。
三日目には、午後四時頃に、再びその女が現れ、大釜の前で火を焚いていました。
四日目には、隣の家の女房が裏口に出ると、その女が垣根に立ち、家の中を覗き込んでいました。隣の女房は大いに驚き、家の中へ駆け戻ると、化け物はたちまち姿を消しました。
五日目の夜には台所に現れ、杵で庭をドンドンと打ち鳴らしました。
どうすることもできず、仏事や祈祷しかないと思い、さまざまに祈ったところ、本当に仏神のご加護があったのか、その翌日は現れませんでした。「もう来ることはないだろう」と言い終えたとたん、空から「五度で済むとは限らない」と声が響きました。
その夜、主人の寝ている枕元に現れて姿を現し、ろうそくを吹き消しました。主人の女房は驚き、しばらく気絶しました。
七日目の夜には、伊予夫婦が寝ている枕元に立ち、二人の頭を取り合ってぶつけ合わせ、また裾から冷たい手で足を撫で回しました。
驚いた夫婦は気を失い、そのまま狂乱し、二人とも死んでしまいました。
何が原因かはまったくわかりませんでした。
所感
自分はこの話し怖いなと感じました。と言うのも、最後の一文。何が原因かが分からないと言うところ。大体の怪異には理由があるものですが、こちらは理不尽に取り憑かれたというのが怖いですね。
もしかしたら、何かしら恨みを買う事があり、誰からかの呪いだったのかもしれませんが。
一見コミカルな所業の幽霊ではありますが、エスカレートしていき、最後は直接手を下しているところも怖いポイントかなと。
参考書籍：
現代語訳ではないですが、ふりがなが振られており、単語の意味なども掲載されているので読みやすく勉強になります。