これも書籍やテレビの怖い話特集などでよく使われる都市伝説で、さまざまなバリエーションがある有名なもの。
最後がやはり怖いので印象も強く記憶にも残りやすいのかなと。
夢と違う!
最近、同じ怖い夢を見る。
いつもの帰り道。誰かにつけられている。視線を感じる。怖くなって振り返ると、誰かが物陰に隠れるのが見える。それで私は怖くなって、家まで逃げるように走る。
けれども、玄関のドアを開けようとしたとき、その男に捕まってしまう。男の顔はもやがかかっていて見えないが、派手な迷彩柄のパーカーが脳裏に焼き付いている。
かなりリアリティのある夢で、起きると捕まれた腕がじんじんと痛む。ひょっとしてこれは予知夢というものかと怯えていた。しかし、夢を見始めてから数週間、同じことは起きなかった。疲れて怖い夢を見ているだけで、あれはただの夢だ、と思うようになり気を緩め始めたときにそれは起こった。
改札口を出て、いつものように家に向かう途中、あの迷彩柄の服が視界の隅に過ったのだ。心臓の鼓動が速くなるのが分かる。
駅の人混みの中に紛れ、私は考える。
ゆっくりと気配を探り始める。スマホを見るふりをしつつ、自撮りモードにして後ろを確認すると、かすかにあの迷彩柄が映る。あれだけ派手な服で助かった。
マンションの敷地に入り、エレベーターで3階に上がる。おそらくあいつは階段で上がってきているのだろう。
呼吸を整えて、エレベーターから出て自室に向かう。背後から何かが迫ってくる音がする。その次の瞬間、激しく何かが接触する音が響く。
「くそっ、放せ!」
振り向くと、数人の警察官に取り押さえられた迷彩柄の男が暴れていた。手に刃物を持っていたようだが、警官にはたき落とされ、転がっていた。
そう、私は事前に警察に通報していたのだ。「ざまぁみろ」とは言いたい気持ちを抑えつつ、迷彩柄の男を見下ろす。男は「ちくしょう」と連呼しながら、最後にこう言った。
「夢と違うじゃないか!」
まとめ
この都市伝説の怖いところは、犯人も同じ夢を見ていた点にあります。言わずもがな、色々なバリエーションはあるものの、最後に「夢と違う」と恨み節を言うのが定番です。
主人公が無事で犯人がメッセージを残す、というのは古典的な都市伝説のパターンとも言えますが、同じ夢を見ていて惨劇を回避するというのは、日本の都市伝説特有のものではないかと思います。
発祥はよく分かりませんが、一説によると、結城モイラ氏の『わたしの心霊体験』という本に類似した話があるそうです。それが1993年なので、その後、怖い話などの本で同様の話が掲載され、1990年代の日本で流行したようです。
おすすめの書籍
都市伝説の話しを読みたいなら、日本人なら、松山ひろし氏の書籍が面白いと思います。
昔webサイト「現代奇談」を良く読んでいました。そちらのサイトは閉鎖されてしまっていますが、書籍がいくつかでているのでオススメです。
民族学的に学びたい場合は、ジャン・ハロルド・ブルンヴァン氏の書籍が面白いのですが、日本語のKindle本や、そもそも書籍も手に入り辛いのが残念。もし、興味があったら古本などで探して購入してみても面白いと思います。