サイトで怖い話をまとめ始めてから、子供のころに聞いた怖い話は、典型的な都市伝説だったんだなぁ、と思うことが多々あります。近所のおばさんが突然怖い話を始めたり、親戚のおじやおばなどが、年末年始やお盆の時に会ったときにふと話してくれたりしていました。その時は小さかったので、真偽がよく分からず怖がっていた思い出があります。
今回はその時の話を思い出して、それをベースに紹介したいと思います。
ねぇ、何で背負っているの?
これは自分の叔母から聞いた話です。
叔母の知り合いの話だそうです。
その子は、いわゆる「見える体質」の子だったそうですが、親はそれを小さいころによくある現象だと考え、霊的なものだとは思っておらず、見えない何かが見えると言っても適当にあしらっていたそうです。
ある日、家に数年ぶりに伯父が来ることになりました。子供は伯父が来ることを楽しみにしていました。以前はよく伯父夫婦が家に来て、一緒に遊んでくれていたからです。しかし、突然家に来なくなって、子供は寂しがっていました。理由を聞いても、親からは詳しく教えてもらえず、もどかしい思いをしていたのです。
母親からは、「お嫁さんは来ないで、伯父だけが来る」と言われました。「お嫁さんは忙しくて来られないの」と。
子供は残念に思いました。伯父も好きでしたが、お嫁さんの方が一緒に遊んでくれていたし、優しかったからです。
そして、伯父が家に来ました。チャイムが鳴ると、一目散に玄関まで走っていきました。そして、ドアの鍵を開けて伯父を迎えたのですが、子供は後ずさりして固まってしまいました。
伯父は「久しぶりだね、覚えているかい?」と微笑みました。子供の母親も現れて、伯父に声をかけ、固まったままの子供にどうしたのか、と尋ねました。
子供はじっと伯父を見つめています。いや、どちらかというと伯父の後ろを見つめていました。
伯父も不思議がって「どうしたんだい?」と声をかけました。すると、
「伯父さん、どうしておばさんのことを背負っているの?」と、子供が言いました。伯父の顔はみるみるうちに強ばりました。
母親が子供を叱りつけ、伯父に「ごめんなさい」と言いましたが、二人とも動きませんでした。
「…あいつ、どんな顔しているの?」と伯父が言いました。
子供はひどく怖がりながら、ゆっくりと言いました。「伯父さんのこと、すごくにらみながら、指さして『こいつだ』って」
伯父は、はっとしたかと思うと、踵を返して走り去ってしまいました。
その後、伯父は家に来なくなりました。それには理由がありました。
伯父のお嫁さんは行方不明になっていましたが、実は伯父に殺されて湖に沈められていたのです。
子供がそれを知ったのは、大きくなってから母親から聞かされてのことでした。
実は、あの日伯父が来てから数日も経たないうちに、伯父は逮捕されたのです。それで母親も、子供が「何か見える」と言うのを信じるようになったそうです。
しかし不思議なことに、その子はそれっきり不思議なものは見なくなったそうです。
まとめ
この話と同じような構造の話に、捨てられた子供が転生して、大きくなってから父親に「また捨てないでね」と言う話や、これを元に作られたのか、あるいは以前から存在していたのか、江戸時代や古くは平安時代を舞台に、妻を捨てた夫に子供が「どうしてお母さんを背負っているの?」と問う話もあります。確かに、今昔物語あたりにありそうな話ですね。
この話を詳しく知ったのは、松山ひろし氏という都市伝説蒐集家の本を読んだときで、その本によると明治時代から存在している話だと紹介されていました。
大人になってから知ったので、子供のころはすっかりだまされていたなぁ、と笑ったものです。
おすすめの書籍
都市伝説の話しを読みたいなら、日本人なら、松山ひろし氏の書籍が面白いと思います。
昔webサイト「現代奇談」を良く読んでいました。そちらのサイトは閉鎖されてしまっていますが、書籍がいくつかでているのでオススメです。
民族学的に学びたい場合は、ジャン・ハロルド・ブルンヴァン氏の書籍が面白いのですが、日本語のKindle本や、そもそも書籍も手に入り辛いのが残念。もし、興味があったら古本などで探して購入してみても面白いと思います。