「ブティックで失踪する」という都市伝説は、女性を中心に多くの人々に恐怖を与える話です。人が突然姿を消し、その後の行方がわからなくなるという不気味な話しで、今なお語り継がれています。
ブティックにて
友達の友達から聞いた話。
ある夫婦が新しくできたブティックに買い物に来ていた。少し入り組んだ場所にあり、店内には自分たちだけだったが、品物は質がよく、値段も安かった。
夫人は大量に服を試着室に持ち込み、夫は「やれやれ」と店内を見回したり、スマートフォンをいじったりして時間を潰していた。しかし、いくら待っても夫人は戻ってこない。試着室の前で声をかけても返事はなく、気づけば夫人の靴も消えていた。おかしいと思い、カーテンを開けたが、そこに姿はなかった。
すぐに店員を捕まえて尋ねたが、「帰ったのでは?」と一方的に言われるだけ。電話をかけても繋がらず、不審に思いながらも、一度家に帰ったが、深夜になっても夫人は戻らなかった。
夫は警察に連絡したが、最初は「痴話喧嘩か何かで家に帰ってこないだけでは?」と相手にされなかった。それでも彼は「あの店でいなくなったんだ」と強く訴えたため、警察は「一応店の方にも話を聞いてみます」と約束してくれた。
しかし、後日、警察からあった連絡は、「すでに店はもぬけの殻で誰もいない状態だった」というもの。そして、「試着室には隠し扉があり、そこに夫人のものと思われる靴が落ちていた」とのことだった。
夫は絶望した。「あの時、もっと調べておけば……いや、もっと早く声をかけていれば……」。そんなうちひしがれた夫に、突然、妻からなんと電話がかかってきた。
驚いて電話に出ると、怯えた声で「助けて」と言う。どこにいるのか尋ねるが、「わからない、でも……」と言ったところで電話は切れてしまった。
それから数年が経ち、夫はあてもなく似たようなブティックがないか街をさまよい、妻の姿を探し続けた。ある日、仕事で中国に渡った彼に、現地のアテンドが「ちょうど見世物小屋が来ている」と言い、半ば無理やりに連れて行った。アテンドは「きっと驚くよ」と言ったが、夫は気乗りしないまま小屋に入った。
そして、アテンドの言葉通り、彼は驚いた。そこには、妻がいたのだ。しかし、両手足は切断され、精神がおかしくなったのか、薄ら笑いを浮かべていた。
その後、警察などの協力もあり、妻は救出されたが、元の精神状態に戻ることはなく、日本の病院でひっそりと治療を続けているという。
背景
試着室で女性が行方不明になるというストーリーの核心部分は、昔フランスで広まった「オルレアンの噂」と似ています。Wikipediaによると、この噂は各地に飛び火し、1970年代にはパリ在住の日本人の間でも語り継がれていたそうです。パリへの旅行者を通じて、日本にも伝わったと見られています。
まとめ
「ブティックで失踪」という都市伝説は、日常の中で突然人が姿を消すという恐怖を描いています。買い物や旅行という楽しみの裏に潜む不安感や、試着室というプライベートな空間での異常事態が、多くの人々に恐怖を与えました。こうした都市伝説は、現実に基づかないフィクションですが、社会の不安や心理的な要素を反映したものとして興味深いものです。
また、日本だけではなく、いなくなるはずの内密室でいつのまにかいなくなる、という恐怖は世界共通なのだなと。にたような話しで、ドライブインのトイレに行って戻ってこなくなる話しなどもあるのも興味深いところです。
おすすめの書籍
都市伝説の話しを読みたいなら、日本人なら、松山ひろし氏の書籍が面白いと思います。
昔webサイト「現代奇談」を良く読んでいました。そちらのサイトは閉鎖されてしまっていますが、書籍がいくつかでているのでオススメです。
民族学的に学びたい場合は、ジャン・ハロルド・ブルンヴァン氏の書籍が面白いのですが、日本語のKindle本や、そもそも書籍も手に入り辛いのが残念。もし、興味があったら古本などで探して購入してみても面白いと思います。