いわゆるドッペルゲンガー。その亜種と言える話。
こいとさん
アンは教室で一人、机に肘をつきながら深刻な表情を浮かべていた。
普段ならクラスメイトと笑顔で話しているはずの彼女の姿に、ケイは不思議に思い声をかけた。

「どうしたの?なんかあった?」
アンは少し間を置き、ため息をつきながら答えた。
「昨日、変なことがあって……」
そう言いながらアンは話し始めた。
昨日の夕方、彼女が駅前の交差点を渡っていたときのことだった。
人混みの中、アンは奇妙な違和感を覚えた。
目の前から歩いてくる人々の中に、何か不思議な感覚を覚えたのだ。
「あれでしょ、前もあった軍人さん」
ケイが茶化したが、アンは無言で首を横に振る。
「私がいたの」
「え?」

交差点の向こうからは自分と瓜二つの人間が歩いてきたのだ。
「最初は似ているな、と思ったけど自分の事はよく分からないから、でも」
アンはその瞬間を振り返りながら、言葉を慎重に選んで続けた。
「すれ違うとき、その人が小さな声でこう言ったの。
『あと一回』って。」
「どういうこと?」
とケイが驚いて聞き返す。

「私も驚いて顔を上げたんだけど、その人、もういなかったの。
人混みの中で消えたとかじゃなくて、本当に跡形もなく消えちゃってて……」
「それって、ドッペルゲンガーってこと?」
「そう・・・なのかな」
「とりあえず・・・帰ろう」
—帰り道

「実は変な事、もう一つあって」
アンは俯きながら呟いた。
「何があったの?」
「この前の週末、家で飼っていたインコが死んじゃったんだけど」
アンは顔を上げてケイの顔を見つめる。
「外に出して遊んでたら、急に鳴き出して天井付近まで上がっていって・・・そしたら真っ逆さまに落ちてきて」

そこで口を噤んだ。
「そっか・・・そうだ、神社でお祈りでもしてこうよ」
ケイは目の前に見えた神社を指さし、アンを連れて行く
「神社で厄除けになるのかな」
「いいんだよ、良い事有るようにって」
「あ、五円玉ない」
とアンが呟く
「10円玉でも良いんじゃない?」
「だね」

—数日後
ケイが提出するプリントを用意していると向かいにアンが腰掛ける
「ちょっと待ってね」
「ケイも『こいとさん』に気をつけてね」

机の上に置かれたアンの手は生気がなく青白かった。
「アン、指怪我してるよ」
そういってケイが顔を上げたが、そこにアンはいなかった。
「アン・・・?」
廊下から悲鳴が聞こえた。
ケイが駆けつけると、そこには恐怖に脅えた顔で事切れたアンが横たわっていた。
そして、彼女は見たのだ。
廊下の奥から、こちらを見つめる自分の姿を。

こいとさんは自分とうり二つの人物
こいとさんと二度会ってしまうと、死んでしまう
こいとさんは、現れる前兆は三つ
①財布から5円玉がなくある
②ペットが2ヶ月以内に死ぬ
③知らぬ間に左手の薬指にけがをしてしまう
この前兆があるとき、こいとさんはそばにきている
1度会った以降にこの前兆が現れたら危ない・・・と言われている。
ドッペルゲンガーも二人に会うと死ぬといわれていますが、それと違うのは出会う前に前兆が訪れるということでしょうか。ただ、これを知っていても出会うことを避けれるかは謎です。
おすすめの書籍
都市伝説を含め、日本の怪異を辞典にした本です。辞典ですが、何となく読み進めるだけでも面白い。
量が多いですが、亜種も一つとしてカウントしているので同様の怪異または都市伝説も多く、一つ一つの内容が少ないこともありますが、圧倒的な熱量で集めた怪異の数々はホラー好きならば持っておいて損はない一冊だと思います。
