ネットロアの一つ。さまざまなパターンがありますが、ビデオメッセージのものを紹介します。
遺書
ある男性の話し。
登山が趣味の男性は、ある山で登攀中に事故に遭い帰らぬ人となった。

クライミングを行うには命の危険も伴うのは承知の上だった。
仲間達もそれは重々承知していた。
しかし、男性には生まれたばかりの子供もいた。
家族は止めたが、彼は
「山に登るのが俺だから」
と言って聞かなかった。
仲間達も口には出さなかったが、男性の気持ちに同意していた。
彼の妻は気丈にも
「分かっていて結婚しましたから」
と言って涙を見せなかった。

葬式が終わり、四十九日を迎える頃、登山仲間が彼の妻の元へ向かった。
「いつもはこんなことしないのだけれども」
と一枚のDVDを渡してきた。
男性は山に向かう前に何かあったときのために遺言を残したというのだ。
「子供が産まれたばかりだったからかも・・・」
妻はDVDを受け取り、
「一緒に見てくれませんか?」
と登山仲間に声をかけた。

仲間達は頷き、彼の妻と仲間達が見守る中、DVDが再生された。
映像は椅子に座った男性が、微笑みながら家族の名前を呼ぶところから始まった。

家族への謝罪、そして戻ってきたら暫くは登山は控えることを話していた。
彼の妻は堪えられず涙を流していた。
が、突然男性の顔がゆがみ始めた。

画面にノイズが走り彼の顔がゆがみ、音声もまるで断末魔のような叫び声に変わっていった。
一同は何が起きたのか分からず硬直した。
「かぞぉぉぉぉ、たすけ、助けて、誰か助けてくれえ!!」

画面が徐々に暗くなり、男性の腕が闇に飲み込まれると、不気味な顔がゆっくりと浮かび上がってきた
「あいつは地獄に落ちたぞ」

そう、不気味な顔が呟くと映像は終わった。
誰かがもう一度DVDを再生させようとしたが、もう再生することはできなかった。
それどころか、そのDVDには何もデータは入っていなかったという
いくつか亜種がありますが、ポイントとしては、理不尽に地獄に落とされるということ、ビデオメッセージではなく、急死した人の写真が苦悶に満ちていて住職に見てもらうと「地獄に落ちている」と言われたりします。
また、地獄に落とされた死者は何か落とされるような行いをしたという描写がなく、突然の死と理不尽な地獄送りという最悪な結果を伝えられます。
都市伝説やホラーの中にも教訓的な話ではなく、ただただ理不尽で恐怖を追求した話もありますが、これはそれにあたるのではないかなと思っています。
特にネットロアはそういう傾向が強いように思えますね。
おすすめの書籍
都市伝説を含め、日本の怪異を辞典にした本です。辞典ですが、何となく読み進めるだけでも面白い。
量が多いですが、亜種も一つとしてカウントしているので同様の怪異または都市伝説も多く、一つ一つの内容が少ないこともありますが、圧倒的な熱量で集めた怪異の数々はホラー好きならば持っておいて損はない一冊だと思います。
