この都市伝説は個人的に好きな話し。と言うのも、心霊的なものでもなく、ありそうな内容でかつ、かなりぞわっとする結末で、これぞ都市伝説、と思った話しです。
夜中に出会った少女
秋の冷たい夜風が吹き抜ける山奥の道を、一台の車が走っていた。運転するのは父親、隣には小学生の息子が座っている。静かな森の中で聞こえるのはエンジン音とタイヤが落ち葉を踏む音だけだ。
突然、闇の中から何かが飛び出してきた。
「危ない!」
父親は慌ててブレーキを踏み込む。車がギリギリのところで停まり、ボンネットの先に人影が浮かび上がった。それは、小さな女の子だった。少女は道端に座り込み、震えるように肩を上下させている。
父親はすぐに車を降りた。「君、大丈夫か?」
声をかけると、少女は驚いたように顔を上げた。その顔は泥と涙で汚れており、怯えきった目が彼を見上げた。少女は何度か小さく頷くと、絞り出すように「すみません」とだけ言って、立ち上がり森の中へ駆け出していった。
「お父さん、追いかけなくていいの?」
息子が心配そうに車内から呼びかける。しかし、真っ暗な森に入る勇気は父親にはなかった。
「追いかけても見つけられないかも知れないから、後で警察に連絡しよう」
そう考えながらも、父親は再び運転席に戻り、車をゆっくりと進めることにした。
しかし、それから数分も経たないうちに、再び道の真ん中に人影が現れた。今度は大人の男性だった。
「またかよ…」
父親はブレーキを踏み、車を停めた。男は運転席に駆け寄り、窓を叩いてきた。その勢いに息子も思わず身を縮める。
父親は慎重に窓を数センチだけ開けた。「何か用ですか?」
男は焦った様子でこう言った。「娘がいなくなったんだ。10歳くらいの女の子を見なかったか?」
「娘?」父親の脳裏にさっきの少女が浮かんだ。
「もしかして…森の中に走り去った子ですか?」
男の目が一瞬鋭く光る。しかし父親はその異様な雰囲気に気づき、警戒心を強めた。
「その子なら確かに見ましたけど、どこに行ったかは分かりません」
父親がそう答えると、男は何も言わずその場を離れ、森の方へ走っていった。
「お父さん、なんか変だよね。あの男の人…」
息子の言葉に父親も同意せざるを得なかったが、深く考えるのを避け、車を再び走らせることにした。
数日後、自宅でニュースを見ていた息子が突然叫んだ。
「お父さん!この人、あの時の男だよ!」
画面には、逮捕された男の顔写真が映し出されていた。見間違えるはずもない。あの夜、森の中へと駆け出していった男だ。
アナウンサーの声が容疑を説明する。「この男性は複数の児童拉致事件に関与していた疑いで逮捕…」
父親と息子は顔を見合わせ、背筋に冷たいものが走った。
あの時・・・もし少女に声をかけて乗せていたら・・・いや、乗せていたところを男性に見られていたら・・・
まとめ
出会っていた人物が犯人だった、と言うのは作りとしてはありきたりなものではあるのですが、どんでん返し的な怖さは何度聞いてもあると思います。
同じような作りで、バスに乗り遅れたおかげで難を逃れる話しもありますね。一見別の話しのように見えますが、最後に意味が分かると怖いという流れが同じプロットなので別バージョンとして考えていいのかなと思います。
その話しは、山奥を走るバスに乗って帰る予定の親子が子供がお腹が空いたとぐずった為にバス停近くの食堂に入り、一本後のバスに乗る事になる。食堂でご飯を食べているとバスの事故のニュースが速報で流れる。子供が「ごめんね」と言うが、父親は「いや、良いんだ。ありがとう」と言う。話し。
都市伝説の魅力は、色々なバリエーションがあり、形を変えながらも語られることでもありますね。
そして、本当にあったかのような話しだからこそ、語られやすい・・・
おすすめの書籍
都市伝説の話しを読みたいなら、日本人なら、松山ひろし氏の書籍が面白いと思います。
昔webサイト「現代奇談」を良く読んでいました。そちらのサイトは閉鎖されてしまっていますが、書籍がいくつかでているのでオススメです。
民族学的に学びたい場合は、ジャン・ハロルド・ブルンヴァン氏の書籍が面白いのですが、日本語のKindle本や、そもそも書籍も手に入り辛いのが残念。もし、興味があったら古本などで探して購入してみても面白いと思います。