二話目。
都に住んでいた盲目の琵琶法師が遭遇する化け物との戦い。一話目のグロテスクさは然程ないものの、忍び寄る恐怖は現代にも通用する恐怖と言える。
現代語訳:二 座頭旅にて化物に遭ひし事
ある座頭(盲目の琵琶法師)が都の出身で、田舎に下る途中、
弟子一人を連れて片山里を通っていました。日が暮れて泊まる場所が見つからず、ある辻堂に泊まっていたところ、夜半を過ぎた頃、女性の声で「どちらからのお客様でいらっしゃいますか。我が庵は見苦しいですが、ここでお過ごしになるよりは、どうぞ一夜を明かしてください」と声がかかりました。
座頭は「そのご厚意はありがたいですが、旅人の習いですので、ここでも問題はありません。夜も遅いので、そちらに行くつもりはありません」と返事しました。
弟子が「せっかくのお誘いですから、こんな場所に泊まるよりも、焚火に当たり湯水も整った場所へ行かれた方がよいのでは」と勧めます。女性も「どうか」と強く誘いましたが、座頭は「ここで構いません」と無言で座り続けました。
「それなら、この子だけでも少しの間預かってください」と女性が言う。座頭は「夜中に盲目の方が子を預けるなど無茶です」と断りました。
しかし、女は「そんなつれない事を言わず、お願いします」と言って弟子にその子を預けました。
弟子も「少しの間であればお預かりしましょう」と言いました。
座頭は大いに怒り、「無用だ」と言いましたが、別に構わないでしょう」と子を抱えました。すると、女性は去っていきました。
少しすると、その子が弟子の胸の中でどんどん成長し、とうとう十四、五歳の姿になり、弟子に襲いかかりました。
弟子は驚き悲しんでいるうちに食い殺されてしまいました。その後、再び女性の声で「師匠の座頭を襲え!」と聞こえました。
座頭は肝を冷やし、家に伝わる脇差(短刀)を琵琶箱から取り出し、「何者であれ、かかって来るならば刺してやる」と刀を抜いて構えました。
妖怪は刀に恐れをなし、近づきませんでした。
女性の声で「なぜ襲わない!」と叱られると、子の声で「どうしても近づけません」と返しました。しばらく問答が続き、やがて女はどこかへ去っていきました。
座頭は恐ろしい経験をしたと震えながら、夜が明けるまで脇差を手放さずにいました。
夜が明けたので道を進んで行くと、誰かが近づいてきて、「座頭殿、どこから来られてどこに泊まられたのですか」と尋ねてきました。
座頭が一部始終を話すと、「それは化物の住む場所です。よくご無事で助かりましたね。どうかこちらへ」と家に招かれ、さまざまなもてなしを受けました。
「さて、その脇差を少し拝見させてください」と言われましたが、座頭は「この脇差は人に見せるものではありません」と断り、刀の鎺元(はばきもと)を少し緩めただけにしていました。
そのとき、「見せなければ喰い殺すぞ」という声が何人分も聞こえました。
再び化物の仕業と悟り、脇差を抜いて四方八方に振り払ったところ、やがて周りが静まり、空も晴れ、やっと夜が明けました。
こうして座頭は命拾いし、都へ戻ることができました。この脇差は三条小鍛冶によって打たれたもので、不思議な霊力が宿っていたということです。
所感
悩んだところ。
弟子を襲った化け物ですが、原文の方には化け物の姿とは書いておらず、小さい子どもから十四〜五歳の大きさになり弟子を食い殺した。と書いてあるので、見た目は人間に近いのかもしれません。ただ、食い殺すとなると、鬼の様な感じかなと思い、それに近い画像を生成しました。
その後の描写で、女の化け物がこの化け物に「師匠の座頭をなぜ抱かない」と言うのですが、抱きかかえる、と言う言葉が襲うと言う事と一応ここでは「なぜ襲わない」にしましたが、もしかしたら取り押さえると言う意味でニュアンスが違うのかもしれないですね。
物語はホラーストーリとして、弟子は死んだものの綺麗に終わっているもので最後はホッとする内容です。現代のホラーはハッピーエンドで終わる事が少ないので、割りと珍しい感じも見えます。
参考書籍:
現代語訳ではないですが、ふりがなが振られており、単語の意味なども掲載されているので読みやすく勉強になります。